和田 JICAのボランティア「青年海外協力隊」の応募者はいかがですか。
西脇 平成6年頃をピークに減少傾向が続いていましたが、ここ5年間くらいはほぼ横ばいです。少子化の影響もあるのでしょうか、帰国後の再就職を懸念している人もいるようです。青年海外協力隊には休職などの形で現勤務先に籍を残したまま参加する「現職参加制度」もあります。
和田 青年海外協力隊の志望者が増えないのは、若者に危機感がないからではないでしょうか。大学で教えていた私の先輩は、学生たちに国際舞台での活躍を勧めたが思ったほど反応がない。そこで、自らやろう、とシニア海外ボランティアに応募。現在、チュニジアの投資庁に自分の机を持ち、役人と一緒に海外から資金を呼び込むための折衝にあたっているそうです。
「世界の中で日本の存在感が薄れる」という危機感を持つベテラン世代はいますが、「日本が国際社会で果たすべき役割」を意識している若者は残念ながら少ない。総合商社に就職したが、海外駐在はしたくない、という学生さえいるのです。
西脇 確かにわが国の若者は「内向き」になっていると感じますね。それは日本が暮らしやすい国だからでしょう。日本語ができれば生活に不自由しませんし、文化や価値観が異なる外国人と接する必要もありません。でも、グローバル化が進展している今、住みやすい日本は、海外から注目を集めています。
私どもJICAの緒方理事長も発言しているようにヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて自由に移動している今、日本人だけが「のほほん」と安全な暮らしを続けられるわけはありません。できるだけ多くの日本人に「世界の中の日本」を意識してもらおうと、青年海外協力隊やシニア海外ボランティアのOB/OG、専門家経験者等のJICA関係者が小中学校で途上国の現状や国際協力の大切さを語っています。
また、広く一般の方が世界の中の日本を意識し開発途上国の抱える多くの課題を解決する必要性を社会全体で共有できるように、NGOや国際機関、JICAが連携して「なんとかしなきゃ!プロジェクト」をこの7月に立ち上げました。黒柳徹子さんや王貞治さんなど多くの方々に協力いただいてこのプロジェクトを進めています。
和田 英語よりも国際協力・交流などの必要性や世界の中の日本のことを教えた方がいいかもしれませんね。
西脇 そうですね、英語ももちろん大切ですけれども(笑)。
和田 英語といえば、楽天が社内公用語を英語にしました。三木谷浩史さんは英語で議論する役員会を見て、やればできるものだな、と思ったそうです。語学は、必要に迫られると覚えるものですからね。
英語のほかに、国際舞台で活躍するために必要なことはありますか。
西脇 JICAのホームページでは国際協力のプロフェッショナルとして仕事をする際に求められる資質や能力を紹介していますが、中でも私は「問題分析力」とトータルでオーガナイズする「総合マネジメント力」が重要だと思っています。また、バランス感覚も必要です。
人は異なる考え方や価値観とぶつかり合った時に人間の器が深まっていくのではないかと。私は同質化している社会で育ってきました。だから、人と違うことをしてはいけない、個性派はいけないと思っていました。でも、そうではありません。物事に正解はなく、「よりよい答えを作り上げていくプロセス」があるだけです。積極的に、違った考えを持った人たちと意見を交換をしながら
「よりよい答え」を探していくことが、国際舞台で活躍する人材には求められています。
和田 それこそ、明治維新の登場人物たちは個性派ばかり。坂本竜馬、西郷隆盛――。それぞれが違う考えを持っていました。でも、彼らが熱く語り合ったからこそ今の日本があるのでしょう。個性派といえば、元プロサッカー選手の中田英寿さんに注目しています。彼は貧困や紛争などの課題を解決したいと考え、世界中を自分の目で見て回りました。彼は世界の共通語である「サッカー」の力を活用できないか、と考えたようです。