「実践的産学協同」をコンセプトにするデジタルハリウッド。加藤孝信氏はデジタルハリウッド大学大学院の産学官連携センターのマネージャーとして、大学と企業、地方自治体、官公庁をつなぐ窓口の役割を担っている。
大学時代は理工学部でバイオテクノロジーの研究をしていたが、「白衣を着て研究者として働くのは何かが違う」と中退。その後入った専門学校で「コンサルティング」という仕事があることを知り、フランチャイズを中心とした企業支援を行う会社に就職した。
最初に配属されたのは業務提携先の中古車買取業者。社員として働き、成功事例を積み上げた。「それまで接客の経験はなかったのですが、人と接する仕事は楽しく、向いているとわかりました」。その後は人事や総務、労務を担当した。
同社で働いて6年が過ぎたころ、「人を大切にしながら売り上げも伸ばしていく」方法はないのかと疑問が生じるようになった。自身も周囲も3カ月に1日休みがあればいいほう、という状況に「人も会社も元気になるような環境をつくりたいと思い、転職を決意しました」
次の職場に選んだのは大手人材派遣会社。「コールセンターのアウトソーシング企画の提案や、営業のアウトソーシング部門の設立と運営、飲食店関係者の転職支援を行う社内ベンチャーの立ち上げなど、『人材』を切り口にさまざまな業界に働きかけを行いました」
最後のプロジェクトが一段落したとき、財産や財務のコンサルティングを行う会社に引き抜かれた。そこでは、管理部門に特化した人材紹介会社を立ち上げたが、リーマンショックの影響で、1年ほどで他の会社に移らざるを得なくなった。
人材紹介とコネクションの2つを併用

産学官連携センターでは、デジタルハリウッド大学院生のために、企業などと連携し最先端のテーマを掘り下げて研究・開発できるステージを用意している。
実は人材派遣会社時代に、デジタルハリウッドの現代表取締役社長兼CEOである古賀鉄也氏と職場を同じくしていた加藤氏。コンサルタントとしてデジタルハリウッドに月1度の割合で訪問していたこともあり、古賀氏から「次はウチへ来てほしい」と直々に声が掛かっていた。
「学生と企業や地方自治体などをマッチングさせる仕事と聞いていたので、自分の経験を生かせて興味のある領域だと思いました」。しかし、30歳を超えて異業種に転職するのはリスクもかなり大きい。そこで加藤氏が選んだのは、人材紹介と併行して転職活動をするやり方だった。
「信頼できるエージェントに、私くらいの年齢とキャリアを持つ人材を必要としている企業をピックアップしてもらい、事前に話をつけてもらってから面接に臨みました」。こうすることで、入社する可能性の高い企業だけに、一から自己アピールすることなく接触することができた。
エージェント選びでは、仕事を通じて出会った中で、自分より年上で、一つの業界でスキルやキャリアをしっかり持っていて、人事責任者もしくは経営者とのリレーションが取れている経験豊富な人物に依頼した。「親身に相談に乗ってくれるエージェントが何人かいることは、転職にとても有利。ぜひ上手に『利用』すべきだと思います」
結果的に4社と面接を行ったが、加藤氏にとって雰囲気や商品・サービスが魅力的な企業はそこにはなかった。「すべての可能性を確認できたことで、デジタルハリウッドに転職して新しい領域に飛び込む覚悟が生まれました」
転職して感じたのは、最先端技術への注目度の高さだ。「地域の名産品をどうすれば全国に知らしめられるか、という地域活性化につながる問い合わせが入ることも多い。『デジタルコンテンツなら問題を解決してくれるのでは?』という期待に応えねばと思いますね」
また、学生や研究者の近くで働く中で、研究のためには大きなコストがかかることも痛感。「だからこそ彼らがお金のことを気にせず、めいっぱい研究でき、それが社会や環境に還元できるような仕組みを、人と人とをつなぐことで中長期的に作っていきたいですね」
「人材」を軸にさまざまな業界を経験し、結果を残してきた加藤氏。いつも心にあるのは「文句は5年働いてから言う。次を決めてから辞める」の2つだ。「退職して初めて就職難を実感するのでは遅すぎます。転機を常に想定し、準備はしっかりしておきましょう」
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